古書店1
 中に入ると螺旋階段があった。
 なんだこの店は。
 そのフロアにあるのは、私が入ってきた入り口と簡素な書棚とソファくらいだ。しかし古本屋独特の匂いが漂っており、やはり本はどこかにあるのだろう。
 この部屋にないとすると、あの階段の上だろうか。
 暫く考えたが、どうせ此処まで来たのだから、と私は目の前にある階段を上り始めた。
 外から見た感じでは、狭いように思えたのに、中に入ってみるとその見解が間違っていた事に気付く。小さかったのは入り口であるこの場所だけで、周りの高い建物全てがこの店のようだった。奥行きもだいぶあり、私は小さく笑みを浮かべる。秘密の部屋を見つけた気分だ。

「ここなら本当に珍しい本が見つかるかもしれない」

 良い場所を見つけたと考えながら階段を上っていくと、カウンターに一人の少年の姿を見つけた。少年は、ちらり、と私を眺め形式張った言葉を述べる。

「いらっしゃい。まぁ、ゆっくり見ていってよ」

 少年は客が来たというのにあまり興味がなさそうだ。留守番でも頼まれたのだろうか。少年は読んでいた本に視線を戻し、再び部屋に静寂が戻る。
 留守番をしているのか、それともこの少年が店主なのか。シルクハットを被っている黒髪の少年は、まだ十二歳かそこらに見える。
 だが、本を探しにきた自分にはそれは重要ではない。少年から興味を無くした私は、所狭しと本棚に詰め込まれている本を物色し始めたのだった。
 
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