狭い路地を歩いていると、まるで自分がネコになったような気になる。
そっと足を忍ばせて……。
別に忍ばせる必要など無いのだが、誰も居ない路地を歩くと私の足音だけが響いてどうにも居心地が悪い。
だから必然的に足音を消すように歩いてしまう。
小心者なのか、なんなのか。
裏路地は人の気配を感じられず、異世界にでも迷い込んだようだった。この世でひとりになったような気になり、だんだんと心細くなってくる。
暫く歩いていくと、小さな看板が見えた。
『珍しい本あります』と小さな添え書きのしてある古書店の看板だ。
「珍しい本? 私の探しているものもあるかな……」
入口から中を覗いてみるが、暗くて中はよく見えない。
建物を見上げてみても手前にある建物は大きくはなく、とてもこぢんまりとした印象だ。探している本が掘り出し物としてあれば良いが、本当にあるだろうか。
少々不安になりつつも、私は微かな希望を胸に、その扉を開けた。