自室
 私は資料を積み上げて、レポートの作成をしていた。
 どうして、これ程大量に資料が必要なものを題材に選んでしまったのか……。
 今更ながらにそれを後悔していたが、一番やりたかったものなのだから仕方がない。
 
「あ、あれ……? おかしいな……どこにも載ってない……」
 
 手を伸ばした先の資料を次々と手に取り中を覗いてみても、今必要な記述が出てこない。
 そしてそれらを読んだ記憶を辿ってみても、私にはそれに関する記述を読んだ記憶がなかった。
 
「……ということは、此処にはないってことだ」
 
 大きな溜息を吐いて、私は立ち上がり伸びをする。
 その資料を手に入れなければ、このレポートは終わらない。
 街で一番大きな図書館で探してこの有様だ。
 後は掘り出し物を狙って、古書店か骨董屋を探すしかないだろう。だいぶ心細くなった財布の残りを思い出しつつ、貧乏学生の自分が買える値段でありますようにと願う。
 とりあえずここでこうしていても仕方がない。
 私はコートを羽織り、冬の街へと繰り出した。
 
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